GUIDE / SETLIST
セットリストの考え方と作り方
曲順のセンスの前に、まず時間です。持ち時間に収まらないセットリストは、当日どこかで必ず削ることになります。
SUMMARY
この記事の要点
- セットリストは曲順ではなく、持ち時間の逆算から組む。
- 押す原因は演奏時間ではなく、MC・転換・拍手といった曲間にある。
- 1曲目と最後の曲を先に決めると、間は自然と埋まる。
- 奏者の体力(特に金管の唇と歌の喉)は、曲順を左右する現実的な条件。
- 押したときに削る曲を、あらかじめ決めておく。
まず決めるのは曲順ではなく、時間
セットリストを作るとき、多くの人は「1曲目を何にするか」から考え始めます。楽しい作業ですが、これを先にやると、あとで必ず時間が合わなくなります。
先に確定させるのは次の3つです。
- 持ち時間 — 何分の枠か。対バン形式なら転換込みか、演奏のみか
- 開演と終演の時刻 — 会場の撤収時刻から逆算する
- 休憩の有無 — 2部構成なら休憩は15〜20分見ておく
この3つが決まると、演奏に使える正味の時間が出ます。ここから曲を並べていきます。
よくある失敗
「持ち時間40分」と言われて、40分ぴったりの曲を並べてしまうケースです。MCや拍手を入れれば確実に超えます。演奏時間の合計は、持ち時間の8割程度から始めるのが安全です。
押す原因は演奏ではなく、曲と曲の間にある
本番が押すとき、原因が演奏そのものであることは多くありません。たいていは曲間です。ここを見積もりに入れていないと、リハーサルでは収まっていたのに本番で超える、ということが起きます。
| 曲間に発生するもの | 見積もりの目安 |
|---|---|
| 拍手 | 1曲あたり 15〜30秒 |
| MC(曲紹介・挨拶) | 短くて1分、話し始めると3分 |
| 楽器の持ち替え・ミュート | 20〜40秒 |
| 譜面の入れ替え | 15〜30秒 |
| ステージ配置の変更・ソリストの移動 | 1〜3分 |
| アンコール | 拍手を含めて 5分前後 |
10曲のステージなら、曲間だけで10〜15分になることも珍しくありません。曲間は「あとで詰められるもの」ではなく、最初から時間割に入れておくものです。
特にMCは、担当者が決まっていないと本番で伸びます。誰が、どこで、何分話すのかを事前に決めておくと、それだけで進行が安定します。
曲順は「最初と最後」から決める
時間の枠が決まったら曲順です。ここは端から順に埋めるより、両端を先に決めるほうが早く決まります。
1曲目
もっとも確実に演奏できる曲を置きます。緊張が最も強く、音も温まっていない時間帯です。難所のある曲、ソロで始まる曲、テンポの速い曲は避けたほうが無難です。「つかみ」を狙って冒険すると、そこで崩れたときに立て直せません。
最後の曲
お客さんの記憶に残るのはここです。演奏の完成度が高く、全員で音が出せる曲を置きます。逆に、ここに繊細な曲を置くと、終わり方が締まりません。
中盤
両端が決まると、間は自然と埋まります。中盤は変化をつける場所です。テンポ、調性、編成(ソロ、小編成、全員)を交互に配置すると、聴いている側が飽きません。「同じような曲が3曲続く」のが、聴き手にとっていちばん眠くなる並びです。
奏者の体力は、曲順の制約になる
音楽的な流れだけで組むと、演奏する側が持たないことがあります。これはアマチュアに限った話ではありません。
- 金管の高音 — 高い音が続く曲を連続させない。唇は後半になるほど戻らない
- 歌もの — ボーカルが出ずっぱりにならないよう、インストを挟む
- ソロが重なる奏者 — 同じ人のソロが連続しないよう散らす
- 打楽器の移動 — 持ち替えや配置換えが必要な曲を連続させない
- 最後の曲の負荷 — いちばん疲れた状態で吹くことを前提に選ぶ
特に最後の項目は見落とされがちです。リハーサルでは元気なうちに通すので気づきませんが、本番では2時間吹いたあとに来ます。
紙とペンでやると、必ず計算し直しになる
ここまでの作業を紙やホワイトボードでやると、いちばん面倒なのが「曲を1つ入れ替えるたびに、合計時間を計算し直す」ことです。実際には入れ替えは何度も起きます。曲が決まらない、難しすぎる、トラが見つからない、主催者から時間を変更される。そのたびに再計算です。
この計算を画面上で自動化するために、セットリストシミュレーターを作りました。曲を並べ替えると合計時間がその場で変わるので、「この曲を抜いたら何分になるか」がすぐ分かります。
押したときに削る曲を、先に決めておく
どれだけ計算しても、本番は押します。そのときに慌てないため、事前に決めておくと落ち着いて対応できます。
- 削る候補を2曲決めておく — 抜いても流れが壊れない曲を選ぶ
- MCを短縮する順番を決める — どのMCから削るか
- 合図を決める — 誰が判断し、どうやって全員に伝えるか
- アンコールをやるかどうかの基準 — 何時を過ぎたらやらないか
「押したら何かを削る」と決めているだけでは足りません。本番中に「何を削るか」を相談する時間はないので、曲名まで決めておいてください。
当日の進行表に書いておくとよいこと
曲名・演奏時間・累計時間・MC担当・転換の内容。この5列があれば、進行を管理する人が「いま何分押しているか」を即座に把握できます。演奏者用と進行管理用で、別の紙を用意するのがおすすめです。
組み立ての手順まとめ
- 持ち時間・開演終演・休憩を確定する
- 演奏に使える正味時間を出す(持ち時間の8割から始める)
- 1曲目と最後の曲を決める
- 中盤を、テンポ・編成・調性の変化をつけて埋める
- 奏者の体力とステージ転換の観点で並びを見直す
- 曲間(拍手・MC・転換)を加えて合計を計算する
- 超えていたら曲を減らす。MCを削って調整しない
- 押したときに削る候補を2曲決める
- 進行表を作り、MC担当と転換内容を書き込む
7番目が重要です。時間が超えたときに「MCを短くすれば入る」と考えると、当日ほぼ確実に押します。曲を減らすのが確実な解決策です。
最終更新: 2026/07/27